発表者:
橋本由紀子
日時:
2017/09/06
場所:
明治大学駿河台キャンパス研究棟第5会議室
発表要旨;
ゲーテは1775年と1779年、1797年の三度、スイス旅行を行っている。本発表では、最後のスイス旅行を記した1797年の『スイス旅行』(Reise in die Schweiz1797)を取り上げた。この旅行記は、ゲーテの死後、エッカーマンが編集して1833年に出版されたもので、第一次と第二次スイス旅行を記した散文とは違い、散文になる以前の段階のメモ書きのような形態をとっている。今に喩えると、携帯電話のカメラで撮った多数の写真の集積のようでもある。素材が並べてあるだけで筆者の余分な主観や感情が入らない分、険しい地形に住むスイスの人々が工夫して暮らす姿が読者の脳裏に如実に浮かび上がってくる点で、この旅行記は興味深い紀行文であり、ここで書かれているスイス像は現在でも持たれているスイス像と合致していると言えるのではないだろうか。