ルーカス・ハルトマンの描く鼻-児童文学作品において

発表者
若松 宣子
日時:
2017年1月21日
場所:
明治大学御茶ノ水校舎研究棟第6会議室

発表要旨:

歴史小説を中心に、大人向け、子ども向け作品を意欲的に発表しているルーカス・ハルトマンの“So eine lange Nase”, “Gib mir einen Kuss, Larissa Laruss”を中心に、ハルトマンの児童文学作品について考察した。
ハルトマンは現代の子どもたちと小人、魔法使いなど、メルヒェンの登場人物を遭遇させることから物語を展開させる。小人、魔法使いは鼻などに身体的に際立った特徴があり、そこに象徴されるアイデンティティに苦しんでいるが、子どもたちによって悩みから解放される。両作品とも、メルヒェンの構造に現代的な視点が取り入れられた作品といえる。それぞれの作品は、姉弟が本を書いている、少女がぬいぐるみに語りかけているという一人称形式の語りの構造をとることにより、作品世界内の現実と幻想の境界が曖昧にされているのが特徴となっている。