グラウビュンデンのレト・ロマン語の聖書翻訳と叙情詩

発表者
中川裕之
日時:
2016年5月21日
場所:
明治大学リバティータワー1092番教室(9階)

発表要旨:

スイス・グラウビュンデン・レト・ロマン語の五方言への聖書翻訳が、当地の書きことばの成立と普及に重要な役割を果たしたことを明らかにするために、当時の歴史的背景と各方言地域出身の聖書翻訳者たちの動向とその人間関係を、資料に基づいてひも解いた。翻訳者となった改革派たちの目的が旧教地域への新教普及にあることはもちろんだが、彼らに先立つヨーロッパの人文主義者たちによる、既成の権威にとらわれない自由な発想と交流に感銘を受けてのことであったという点を主張したのちに、そうした動向が結果として地域住民の識字力と知的水準の向上に貢献したのだろうと結論づけた。最後にその開花例として信仰に裏打ちされた代表的叙情詩二点を取り上げて紹介した。