発表者:
葛西敬之
日時:
2021/12/19
場所:
オンライン
発表要旨;
ローベルト・ヴァルザーの創作時期はドイツ表現主義(1910~1925年頃)と重なり、同時代のカシミール・エトシュミートの講演「文学における表現主義」においては表現主義者のひとりとしても数え入れられたが、これまでのヴァルザー研究において表現主義との関連を問うものはごく少数にとどまる。本発表では、少数ながらヴァルザーを表現主義と結びつけるこれまでの諸研究を概観したのち、改めてヴァルザーのテクストにおける表現主義的な要素を検討し、そのうえでヴァルザーのテクストが表現主義とは異なる道へと進んでいることを、とくに『詩人の生』所収の短編「労働者」の雑誌掲載時からの書き換えと同時代の表現主義および戦争に関連する言説を併せて分析することで明らかにする。