発表者:
曽田 長人
日時:
2014/05/17
場所:
明治大学御茶ノ水校舎 研究棟第6会議室
発表要旨;
強制収容所で亡くなったユダヤ人がいわゆるスイス銀行へ預けた消息不明財産の行方が、1990年代中期以降、国際的な世論の注目を集めた。これ以後、第二次世界大戦中のスイスとナチ・ドイツとの関わりが公の場で批判的に問われ、いわゆる『ベルジエ報告』の刊行(2002年)へと至った。こうしたスイスにおける「過去の克服」は、外圧のみに触発されて行われたわけではない。むしろスイスの一部の作家・知識人は、久しくスイスとナチ・ドイツとの関わりを、内発的かつ批判的に、断続的に問うてきた。本発表においてはスイスにおける「過去の克服」の先鞭をつけた、W・M・ディッゲルマン『遺産』を、時代背景を踏まえた上で検討する。